木造薬師如来坐像(もくぞうやくしにょらいざぞう)を安置する明光寺薬師堂は、過去に度々氾濫をくり返した三篠川の河岸に建っています。
この薬師堂は、経年の傷みが激しかったため平成5年(1993年)に保存修理がおこなわれました。この時の調査において、須弥壇(しゅみだん)(仏壇などを安置する壇)の下に墨書が見つかり、建物の創建が天文8年(1539年)であることが判明しました。さらに、今日に至るまでに、宝暦13年(1763年)と文政6年(1823年)の2度にわたって大きな修理が実施されたことが、同じく墨書により明らかになりました。
このように、長い年月を経た建物は幾度かの修理を受けていますが、その時に改造を受ける実例も少なくありません。この薬師堂の場合も、上層茅葺(かやぶき)、下層柿(こけら)(檜(ひのき)などを薄く剥いだ板)葺(ぶき)であったものが、上下層とも瓦葺きに改められていました。そして、正面入口が本格的な禅宗様の扉から一般的な板の扉に、また両脇の入り口の位置も改められていました。その上、間柱(まばしら)(柱と柱の間に補足して立てる部材)も追加されていました。
この宝暦と文政年間に行われた改造により、外観は江戸時代の建物の雰囲気をかもしだしていましたが、平成5年(1993年)の修理では可能な限り創建された時代である室町時代の姿に復元されました。
地元の人々に親しまれ、度々の修理の手を加えられながら今日まで守り伝えられてきた薬師堂は、平成の大修理を経て今後も市域における数少ない室町時代の建物として、後世へと継承されていくことでしょう。
指定年月日:昭和61年(1986年)3月25日
概要:桁行8.23m、梁間8.23m、二重、入母屋造、銅板葺