オオサンショウウオは、カエルやイモリなどと同じ両生類です。押しつぶしたように平たく大きな頭に、2 mm程度の小さな目、頭の周囲全体にわたるほど大きな口、ヌルヌルとした体の表面など、一見なんともグロテスクで怖い感じがしますが、非常におとなしい動物です。また、世界の両生類の中でも一番大きくなるものとして知られており、1.5m近くなることもあるそうですが、野性のものでは50? 70cmぐらいのものが多く、 1mを越えるものはまれです。
中国、アメリカにも仲間がいますが、日本では、中部地方から九州あたりに分布し、中国地方はその生息地として特に有名です。広島県内では、中国山地の麓を流れる太田川、江(ごう)の川、高梁(たかはし)川水系の上流域や中流域に多く、水の流れが緩やかで、一年を通してあまり水量に変化がないところを好むようです。
ところで「オオサンショウウオ」の名の由来についてはいつも水の中にいる大きな動物(魚)で、陸に上げたり体に触れるなどの刺激を与えると、背中いっぱいに植物のサンショウのようなきつい香りのする白い粘液を出すことから付けられたとか、あるいは山に生ずる魚、すなわち「山生魚」など、いろいろな説があります。また広島地方で言う「ハンザキ」の名は、半分に裂いても死なない生命力を持つからとか、口を開けると顔が半分に裂けたように見えるからだとか言われています。オオサンショウウオは、まだまだ謎に包まれた部分の多い動物です。しかし近年の飼育、研究によっていろいろなことがわかるようになりました。彼らの活動は主に薄暗くなってからです。餌となるものの集まるところでじっと待ち、鼻先にきた動くものはすべて口の中に入れてしまうのです。魚やカエル、サワガニなどの他、時には貝類、モグラ、ヘビまで食べることがあると言います。
ふだんはほとんど生息地を動かない彼らですが、7月頃になると繁殖のために産卵用の巣穴に向かつて移動するようになります。巣穴は岩の割れ目や、花崗岩(かこうがん)が浸食されてできた穴などを利用します。8月初め頃に オスのうち体格のよい1頭が巣穴を独占します。産卵期は8月下旬から9月中旬で、この頃になると巣穴のまわりにたくさんのオオサンショウウオが集まります。巣穴を占有するオスは、巣穴に近づいたり、入ってくるオスを激しく攻撃して追い払い、巣穴をきれいに掘りなおして産卵のための準備を整えます。この巣穴に4?5頭のメスが次々と入ってきては卵を産み、そのたびに巣穴のまわりにいた複数のオスも入って放精を行います。メス1頭あたり約500個の卵を産みますから、広い巣穴の中も卵でいっぱいになります。
すべての産卵が終わると、巣穴には卵とそれを守る1頭のオスだけが残ります。卵は約50日で孵化しますが、孵化したばかりの幼生は泳ぐことができません。そこで約3か月を巣穴で過ごし、泳ぐ力もついてきた1月下旬頃、川の流れに乗って散っていきます。この時、約7か月の長い間巣穴を守ってきたオスも幼生とともに巣穴を離れていきます。巣立った幼生たちは、約4?5年で30cmぐらいの成体となりますが、それまでの生態や行動をどは、まだよくわかっていません。
このオオサンショウウオは広島市安佐動物公園で展示しています。
指定年月日:昭和27年(1952年)3月29日