阿戸(あと)は、山間の平地に広がる水田の中にぽつりぽつりと人家のある閑静なところで、勇壮な神楽(かぐら)舞の伝わる里としても知られています。山麓にある山御所阿刀明神社は、「村の鎮守」の趣を昔のままにとどめており、社叢にはたくさんの巨樹がうっそうと茂っています。
この阿刀明神社は、天保8年(1837年)に、古くからあった阿刀明神と宇豆八幡とが合併されたものと言われています。この時新社殿が建立され、神域にスギ、ヒノキ、モッコク、コウヤマキなどが植えられたと伝えられています。おそらくその時のものと思われる木々は、150年の時を経て今は立派な大木となり、鎮守の神を大切に守ってきた人々の心をしのばせます。
社叢には、植林されたものの他にタブノキ、シラカシ、ツクバネガシ、サカキ、リンボク、カクレミノなど、この地域にもともと生えていた広葉樹も多く見られます。なかでも社叢の隅にあるタブノキは見事なもので、県下でも有数の巨樹だと言われています。
また、密生するこれらの木々の下は薄暗く、ベニシダ、ネザサ、ミヤマフユイチゴ、ヒメヤブランなどが人が容易に踏み込めない寡囲気を作りだしています。
所在地:広島市安佐南区沼田町阿戸 山御所阿刀明神社境内
指定年月日:昭和49年(1974年)2月18日
概要:主要樹木の胸高幹囲 タブノキ3.62m・コウヤマキ・2.57m 2.2m スギ・3.41m